TOKYO大樹法律事務所

コラム

シンポジウム「メディアとLGBT “ホモネタ”って笑っていいの?」ご報告

弁護士 上杉 崇子

 2017年2月21日、私が所属する東京弁護士会・性の平等に関する委員会(2016年11月に、「両性」の平等に関する委員会から改名しました。)主催のシンポジウム「メディアとLGBT “ホモネタ”って笑っていいの?」が開催されました。同委員会によるLGBTに関するシンポジウムは4回目でしたが、今回の来場者は150名以上に上り、過去最高の人数となりました。本シンポジウムは、タイトルのとおり、同性愛者やトランスジェンダーといったLGBTの人々が、未だに笑いの「ネタ」や侮辱・嫌悪の対象とされている風潮に疑問を投げかけ、性的指向や性自認に関する差別・偏見を解消するにはどうすればいいかを考えるために企画したものです。
 シンポジウムでは、「シノドス」編集長で評論家の荻上チキさん、タレント・文筆家の牧村朝子氏さん(自身の性的指向がレズビアンであることを公表しています。)、「BuzzFeed Japan」記者の渡辺一樹さんを招き、パネルディスカッションを行いました。
 牧村さんは、メディアでのLGBTの伝えられ方の現状について「笑えるオネエ、泣ける性同一性障害」といった象徴的な言葉を口にしました。同性愛やトランスジェンダーが一種のタブーのように扱われていた過去に比べ、肯定的な取り上げられ方も増えてきたが、笑える「オネエキャラ」や、支援すべき対象として語られるトランスジェンダーばかりが主に取り上げられる傾向にあり、それ以外のLGBTは隠れてしまっているというのです。
 荻上さんは、「LGBT」という言葉がメジャーになりつつあることについて、キャッチーな言葉は見えない存在とされていた人たちを目にみえる人たちとして意識できるようにする効果があるものの、逆に個々の人々が見えにくくなる弊害を指摘しました。また、メディアが偏見を煽るような伝え方をした場合、受け手がその都度指摘することが大切と提案しました。
 渡辺さんは、メディアの伝え方は受け手に模倣・再現されることがあり、そのことにより特定の人たちを傷つける危険性を意識してブレーキを踏めるようにしておくことが大切であり、他方で、LGBTの人たちの日常的でポジティブなニュースも提供することで社会意識に一石を投じる、というアクセルを踏むことの必要性を語りました。
 そして、LGBTの人々が、特別な存在としてでなく、自然な普通の存在として広く受け止められるようにするには、という問いかけに対し、渡辺さんは、メディアが押しつけるものではないが、セクシュアリティは個人の尊重の問題であるという価値観をいかに提供できるかを考えていると述べ、牧村さんは、LGBTであってもなくても、ありのままの自分らしさを大切にすることの重要さを発信し続けたいと話しました。荻上さんは、●●中心主義(たとえば、異性愛中心主義、男性中心主義、健常者中心主義など)を解体することが必要であり、LGBTを特別なカテゴリーとして閉じ込めるのではなく、個性・特性という意味での「タグ」として伝えるようにすべき、と提案しました。
 盛りだくさんな内容で、終了時間を若干超過しましたが、途中で席を立つ人はいず、終了後もゲストへの質問等で大勢の人が会場に残り続け、本テーマに対する関心の高さと真剣さがうかがわれました。
 LGBTは、異性愛者や身体的性別に違和感のない人たちを含めた、セクシュアリティ(性的指向・性自認)のあり方の個性・特性であり、特別視されたり、差別される理由はありません。LGBTの人々が、本当の意味で、目にみえる普通の存在になるためには、私たち個人個人が、「性の多様性」を理解し行動することが大切です。そのことが、メディアからも日常生活からも「ホモネタ」をなくすことに繋がり、ひいては、同性愛やトランスジェンダーを否定的に特別視してきた社会意識を変えることに繋がるはずです。そんな手応えを得たシンポジウムでした。
(2017年4月)