TOKYO大樹法律事務所

コラム

性犯罪の規定が大幅に改正されました

弁護士 村田 智子

 今年の通常国会で、刑法が改正され、性犯罪に関する罰則規定が大幅に変わりました。既に7月13日から、この改正法が施行されています。
 今回の刑法改正の主な内容は、次の5点です。
 1点目は、「強姦罪」が「強制性交罪」という名称に変わり、対象が大幅に拡大されたことです。今までの「強姦罪」は、対象の行為が膣性交に限定されていましたが、今回の改正で、肛門性交や口腔性交も対象となりました。その結果、被害者は女性に限定されなくなり、また、これまで強制わいせつ罪でしか処罰されなかった性交類似行為が強制性交罪で処罰されることになりました。この改正により、これまでなかなか表に出てこなかった、男性の被害者、LGBTの性暴力被害者に対する救済の道が大幅に広がったといえます。
 2点目は、法定刑の下限が「3年」から「5年」に引き上げられたことです。この引き上げによって、強制性交罪では、情状酌量されない限り執行猶予がつかないことになりました。また、一般の強姦罪(強制性交罪)の下限が引き上げられたことにより、集団強姦罪の規定(刑の下限は4年)は廃止されることとなりました。
 3点目は、非親告罪化です。これまでの強姦罪は、親告罪で、被害者が告訴をしなければ被疑者は起訴されませんでした。これが、被害者の告訴がなくても起訴されうるように変わったのです。これまで、被害者は、告訴をするかどうか捜査機関等に迫られ、精神的に辛い思いをしてきました。また、被疑者側の弁護士から、執拗に告訴の取り下げを迫られるというようなこともありました。非親告罪化により、このような問題は改善されると思われます。
 4点目は、監護者類型の罰則が新設されたことです。18歳未満の者を監護している者が、その影響力があることに乗じてわいせつな行為をした場合には監護者わいせつ罪、性交等をした場合には監護者性交罪で処罰されることになりました。この規定は、通常の強制わいせつ罪・強制性交罪に要求されている「暴行又は脅迫」の要件を要しないという点で、画期的な規定です。この規定の新設によって、性的虐待を受けている児童に対する救済の道が広がることが期待されます。
 5点目は、強盗罪と強制性交罪(強姦罪)が同じ機会に行われた場合の規定の整備です。これまでの規定では、強盗強姦罪として重い処罰を受けるのは、強盗が先に行われた場合のみでした。これをどちらが先に行われても強盗・強制性交罪として処罰されることになったのです。
 以上が主な改正点です。
 この刑法改正は、性暴力・性犯罪の被害を受けた方や支援者により切望され、支持された結果、実現したものです。私も、長年にわたって性暴力・性犯罪被害者の支援に携わってきた者として、今回の改正は本当に嬉しいです。
 今後、刑法改正により、より広く、性暴力・性犯罪の被害者が救済され、必要な支援を受けることができますよう願っています。
 また、同時に、今回の改正では落ちてしまった様々な重要な論点もあります。例えば、強制性交罪の要件である「暴行・脅迫」が最強度の暴行・脅迫でなければならないと解釈されているという問題や、自ら被害を訴えることが困難な年少の被害者について時効を停止等すべきではないかという問題、性交同意年齢とされている13歳があまりにも低すぎるのではないかという問題、夫婦間の性暴力が処罰されていないのではないかという問題等です。
 今回の刑法改正について、与野党は、衆議院で、施行から3年を目処に必要があれば性犯罪の実態に応じた措置を講じることで合意し、付則に盛り込みました。
 さらに良い改正がなされるよう、私も、被害を受けた方や支援者とともに、尽力してきたいと思っています。

(2017年7月)